2012年3月17日-18日 味噌と豆腐と竹かごづくり

 以前から心待ちにしていた日がいよいよやってきました。なぜなら、「自分で育てた大豆でお味噌を作る」という夢がまさに後一歩で実現しようとしていたからです。そんなワクワクする気持ちを抱きながら、びりゅう館に到着すると、既に大きな釜の中で湯気を立てながら大豆が茹っていました。

 一晩水の中に浸して膨らんだ大豆を、水から2時間程、飴色になるまで茹でたら、1時間程蒸らします。少しとろっとした飴色の茹で汁を頂くと、豆の甘い香りと優しい味が口一杯に広がります。どこかほっとする味です。さて、いよいよここから地元のMさんのご指導の下、味噌の仕込みが始まります。茹でた豆をザルに空けて、熱いうちにミンサーにかけていきます。麴菌がちゃんと活動できるように、うちわで冷ましたら、米麴と麦麴、塩を加え、手でまんべんなく混ぜていきます。大2:麴2:塩1の割合が基本。後は自分の好みで調整すれば自分だけの手前味噌が楽します。

 

 茹で汁(=アメ)で硬さを調整(硬さの目安は、指で掴んだ時に指の間からゆっくり出てくる、または投げつけた時のベチャッとした感触…だそうです)したら、容器に入れて、後は麴菌さんが一年程の時間を掛けてじっくり発酵してくれるのを待つだけ。参加者の中には、お味噌はその場でできるものと思っていた方もいたようですが、「仕込み」という言葉のとおり、麴菌の分解酵素で、時間を掛けて味噌に熟成されていくのですね…。今はただの豆に塩の辛さと麴の生臭い香り(ハムスターの匂いという説もあり!?)が加わった物体(!?)が、お味噌に変身するとは不思議です。この“じっくり待つ”という感覚…今はなかなか味わえない貴重なものですね。夏場は25度±5度、冬場は15度±5度を保ち、梅雨明けする頃、天地返しをしましょう。

 

 昼食は、地元のお母さんF子さん達の美味しい手料理の数々--煮団子、混ぜご飯、ヤーコンきんぴら、白菜漬けの炒め物、白菜とカラシ菜の漬物、手造りこんにゃく、ポテトサラダでお腹が満たされます。いつもごちそうさまです。

 

 午後はHこさんご指導の豆腐作りです。一晩水に浸けておいた大豆をアルカリ水と一緒にミキサーにかけると、きれいな白色に早変わり。鍋に移し替えて、焦げないようにゆっくり弱火にかけて、底から優しくかき混ぜていきます。すると今までの青臭さから、馴染みのある豆腐の香りに変わって行きます。火を止めてにがりを溶かした湯を加え、丁寧にゆっくりとかき混ぜ、徐々に固まってきたら、布で濾し、手ぬぐいをかぶせた型に流し込みます。フタをして10分程置くと…。豆腐の出来上がり!自分たちの育てた一粒一粒の大豆からお味噌や豆腐が作れるなんて、何て贅沢なのでしょう。過程を知る、過程を楽しむ…こうした豊かな時間を過ごせることが、幸せにつながるのかなぁなんて思いながら、出来たての豆腐を味わいました。

 

 夕食は、地元のMさん兄弟が打ってくれたおそば、野菜たっぷり味噌風味鍋、いなり寿司。おやつにお焼きを食べすぎたことをちょっと後悔しながら、懲りずにお腹一杯食べてしまいました。夕食後、Mさん宅に移動し、夜遅くまでMさんの熱い語りを聞いていると、さいはらの空にはいつの間にか満天の星が輝いていました。

 

【二日目】

 翌朝、雨上がりのさいはらは、山に靄がかかり幻想的な風景に包まれています。

 昨晩あれほど食べたのに、朝から、雑穀ご飯、手打ちそば、白菜の漬物、梅漬け、煮物をペロリと食べてしまいました。Mさんの納屋には、宝物が一杯。千歯こき、箕など昔ながらの農機具が並んでいて、ついつい長居してしまい、びりゅう館に着いた頃には、既に今日から参加の方たちが豆を茹でている釜の周りに集まっていました。

 

 引き続き、お味噌を仕込んだら、お楽しみの昼食タイム。雑穀ご飯、具だくさん味噌汁、ネギたっぷり肉炒め、ジャガイモの煮付け、フキノトウの天ぷら、お漬物、豆腐、わさび漬け…。何とフキノトウはちょうど数時間前に、びりゅう館の前で子供たちと一緒に取ってきたもの。そんな春の訪れを感じられる恵みがすぐ近くにあるのもさいはらの魅力のひとつです。

 

 さて、午後の竹細工。ちょうど前回、道端で竹細工のおじさんに出くわした時は、匠の技に驚いて茫然と眺めていただけでしたが、今日は自分たちがやるなんて、本当に大丈夫でしょうか…。

 

 竹細工には、肉が分厚く弾力性がある真竹の節がない部分が適しています。竹の一番外側の部分を、薄さ約1ミリ、幅約8ミリ、長さ約30cmに切りそろえたものを数百本も用意するのに、前夜遅くまで作業して頂きました。ありがとうございました。

 

 それらの竹を縦10本、横10本を交差しながら、編み込んでいったら、水に湿らせ曲がりやすくなる特性を生かして、それぞれの面の中央部から立ちあげながら編んでいきます。これがなかなか難しい…。不器用な私は半泣きしながら、どうにか筒型にすることができました。口の部分は縦に細く切り込みを入れて、中に折り込んでいき、最後に針金で留めて、どうにか完成しました。小さい竹カゴですが、これほどの手間暇がかかるとは…。竹細工の見方が完全に変わりました。

 

 今回、味噌仕込み、豆腐作り、竹細工など、知恵と工夫に満ちた暮らしや、MさんやKさんたちの生きざまを垣間見たことによって、単なる体験に留まることなく、その根底に流れる先人たちが大切にしてきた精神のようなものを知ることができたような気がします。「伝承」とはただ技術だけではなく、精神を受け継ぐことなのかもしれません…。

 

 また、普段忙しい、忙しい…とつい口走ってしまう私ですが、何だかこの二日間は別の時の流れの中にいた気がします。そんなさいはらは、「私たちが生きる同じ時間に、地球のどこかで雄大な時間が流れていることを思い出してみて」と語った星野道夫さんの言葉を思い出させてくれます。地に足をつけて歩んできた日本人の暮らしがまだ残るさいはら。いつもなぜかほっとするのは、こういう理由もあったのかもしれません。

 

 個人的には昔毎年訪れた父方の祖母の家を思い出す場所でもあります。祖母が生きているうちに、もっと色々なことを教えて貰えば良かったなと今回程思ったことはありません。

私たちのモットーとしている、「さいはらの手仕事を学ぶ・手伝う・伝える」を本当の意味で理解し、とても意義深いことであることを改めて知った二日間でした。お世話になった皆さま、参加された皆さま、ありがとうございました。

 

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